Molecular Hydrogen stabilizes atherosclerotic plaque in low-density lipoprotein receptor knockout mice. | 分子状水素はLDL受容体ノックアウトマウスの アテローム性動脈硬化プラークを安定化させる
Free Radic Biol Med. 2015 Jun 24. pii: S0891-5849(15)00286-5. doi: 10.1016/j.freeradbiomed.2015.06.018. [Epub ahead of print]
Molecular Hydrogen stabilizes atherosclerotic plaque in low-density lipoprotein receptor knockout mice.
Key Laboratory of Atherosclerosis in Universities of Shandong and Institute of Atherosclerosis, TaiShan Medical University
Abstract
OBJECTIVE:
Hydrogen (H2) attenuates the development of atherosclerosis in mouse models. We aimed to examine the effects of H2 on atherosclerotic plaque stability.
METHODS:
Low-density lipoprotein receptor knockout (LDLR-/-) mice fed an atherogenic-diet were dosed daily with H2 and/or simvastatin. In vitro studies were carried out in oxidized-LDL (ox-LDL)-stimulated macrophage-derived foam cell model treated with or without H2.
KEY RESULTS:
H2 or simvastatin significantly enhanced plaque stability by increasing levels of collagen and smooth muscle cells, as well as reducing macrophage and lipid levels in plaques. The decreased numbers of dendritic cells and increased numbers of regulatory T cells in plaques further supported the stabilizing effect of H2 or simvastatin. Moreover, H2 treatment decreased serum ox-LDL level and apoptosis in plaques with concomitant inhibition of endoplasmic reticulum stress (ERS) and reduction of ROS accumulation in the aorta. In vitro, like ERS inhibitor 4-phenylbutyric acid, H2 inhibited ox-LDL- or tunicamycin (an ERS inducer)-induced ERS response and cell apoptosis. In addition, like ROS scavenger N-acetyl-cysteine, H2 inhibited ox-LDL- or Cu2+ (an ROS inducer)-induced reduction in cell viability and increase in cellular ROS. Also, H2 increased Nrf2 (NF-E2-related factor-2, an important factor in antioxidant signaling) activation and Nrf2 siRNA abolished the protective effect of H2 on ox-LDL-induced cellular ROS production.
CONCLUSIONS:
The inhibitory effects of H2 on the apoptosis of macrophage-derived foam cells, which take effect by suppressing the activation of ERS pathway and by activating Nrf2 antioxidant pathway, might lead to an improvement in atherosclerotic plaque stability.
Free Radic Biol Med. 2015 Jun 24. pii: S0891-5849(15)00286-5. doi: 10.1016/j.freeradbiomed.2015.06.018. [Epub ahead of print]
分子状水素はLDL受容体ノックアウトマウスの
アテローム性動脈硬化プラークを安定化させる
山東大学 アテローム性動脈硬化重点研究室
泰山医学院 アテローム性動脈硬化科
<要旨>
目的
水素はアテローム性動脈硬化モデルマウスの進行を抑えます。そこで私たちはアテローム性動脈硬化のプラークの安定性に対する水素の効果について調べることにしました。
方法
動脈硬化を発症させるエサを与えたLDL受容体ノックアウト(LDLR-/-)マウスに、水素あるいはシンバスタチン(コレステロール低下薬)を毎日投与しました。
またin vitroの試験では、酸化LDLによるマクロファージ由来泡沫細胞モデルに対する水素添加の有無で水素の効果を調べました。
主な結果
水素またはシンバスタチンはコラーゲンと平滑筋細胞量を増加させるとともに、プラーク中のマクロファージと脂質値を減少させることで、プラークの安定性を促しました。さらに、水素あるいはシンバスタチンの投与で樹状細胞とTregを増加が確認され、それがプラークのさらなる安定化につながっていることが分かりました。
また、水素は血清中の酸化LDLとプラークにおけるアポトーシスを減少させました。それと同時に小胞体ストレス(ERS)の抑制と大動脈中の活性酸素種の蓄積を減少させました。
一方in vitro試験では、ERS阻害剤である4-フェニル酪酸と同様、水素は酸化LDLあるいはツニカマイシン(ERS誘発剤)によるERS応答と細胞アポトーシスを阻害することが分かりました。さらに、活性酸素消去剤であるN-アセチルシステインと同様、水素は酸化LDLあるいはCu2+(活性酸素発生剤)による細胞生存能力の低下と細胞内活性酸素の増加を抑えました。また水素はNrf2(生体内抗酸化シグナルの重要な因子)の活性化を上昇させ、Nrf2のsiRNA(Nrf2の遺伝子発現を抑制するもの)は酸化LDLによる細胞内活性酸素産生に対する水素の保護作用を無効にしました。
結論
マクロファージ由来泡沫細胞のアポトーシスに対する水素の阻害作用は、ERS経路の活性化を抑制し、Nrf2抗酸化経路を活性化させることで発揮されます。そしてこの水素の作用が、アテローム性動脈硬化のプラーク安定性の改善につながると考えられます。
<一言>
今回の試験は、遺伝子操作で動脈硬化になりやすいマウスに、動脈硬化になりやすいエサを与えると、当然マウスは動脈硬化になりますが、それに水素を与えるとどうなるかを調べたものです。
この論文の中では水素を与えるとプラークが安定しやすくなると報告しています。もともとプラークとは血管の内側に溜まってくるコレステロール等の集合物なのですが、これが破れてしまうことによって、その傷を補修するための血栓ができた結果、血管が詰まってしまいます。なので、そのプラークが破れにくいかどうかという言葉をスマートに言い換えると「プラークの安定性」という言葉になります。
なので、水素によってプラークが安定するので血管が詰まるようなイベント(心筋梗塞・脳梗塞)などが抑えられる可能性があるというわけです。
ちなみにメカニズムとして調べた試験では、水素が体内の抗酸化システムの司令塔的役割のNrf2を活性化させて、カラダをサビから守るということと、小胞体ストレスも抑えるということが明らかになっています。小胞体は細胞の中でタンパク質をつくるところですが、そこがストレスを受けると正常なタンパク質が作れなくなって、不良品のタンパク質が細胞中に溜まりに溜まって、細胞が死んでしまいます。それを水素が抑えてくれるそうです。