Hydrogen-Rich Saline Attenuates Acute Kidney Injury After Liver Transplantation via Activating p53-Mediated Autophagy. | 高濃度水素生理食塩水は p53により阻害されたオートファジーを活性化することで 肝移植後の急性腎障害を緩和する
Transplantation. 2015 Dec 28. [Epub ahead of print]
Hydrogen-Rich Saline Attenuates Acute Kidney Injury After Liver Transplantation via Activating p53-Mediated Autophagy.
Department of Anesthesiology, Tianjin First Center Hospital
Abstract
BACKGROUND:
Acute kidney injury (AKI) impacts the survival of liver transplant recipients severely. To date, the related mechanism and effective therapy have not been rigorously explored. The present study aimed to explore the role of p53-mediated autophagy in the protective effect of hydrogen-rich saline (HRS) on AKI after orthotropic liver transplantation (OLT).
METHODS:
Adult male Sprague-Dawley rats were randomly allocated into four groups: sham, OLT, OLT with HRS (6 ml/kg) pretreatment (HS), OLT with HRS and chloroquine pretreatment (60 mg/kg) group (CQ). All the samples were collected 6 hours after reperfusion. The renal function and oxidative stress level were measured by biochemical and histopathologic examinations. The formation of autophagosome was observed by transmission electron microscopy. The apoptotic rate was determined by terminal deoxynucleotide transferase-mediated deoxyuridine triphosphate nick-end labeling analysis. The expression of caspase-3, cytochrome c, p53, damage-regulated autophagy modulator, Becline-1, microtubule-associated protein light 3-II, p62, lysosome-associated membrane protein-2, and the phosphorylation of p53 were assayed by western blot assay.
RESULTS:
Compared with the OLT group, HRS dramatically attenuated the histopathologic damage, restored the renal function, and decreased the oxidative stress level. Simultaneously, HRS significantly ameliorated apoptosis by decreasing the apoptotic rate and inhibiting the expression of caspase-3 and cytochrome c in rats subjected to OLT. The expression of Becline-1 and microtubule-associated protein light 3-II were upregulated with the inhibition of p62 and lysosome-associated membrane protein-2. The inhibition of autophagy by chloroquine counteracted the renoprotective effects of HRS.
CONCLUSIONS:
HRS is able to protect against AKI after liver transplantation partly by reducing apoptosis, which is possibly involved in the modulation of p53-mediated autophagy.
Transplantation. 2015 Dec 28. [Epub ahead of print]
高濃度水素生理食塩水は
p53により阻害されたオートファジーを活性化することで
肝移植後の急性腎障害を緩和する
天津第一中央病院 麻酔科
<要旨>
背景
急性腎障害(AKI)は肝移植レシピエントの生存率に深刻な影響を与えます。しかしながら現在に至るまで、その発症メカニズムや効果的な治療法がしっかりと研究されることはありませんでした。
そこで本研究では、同所性肝移植(OLT)後のAKIに対して高濃度水素生理食塩水(HRS)が保護を効果発揮する上で、p53により阻害を受けるオートファジーの役目について調べることにしました。
方法
雄のSD成ラットを無作為に下記の4群に分けました:シャム群、OLT群、OLTの前にHRSを事前投与(6ml/kg)する群(HS群)、OLTの前にHRSとクロロキンを事前(60mg/kg)投与する群(CQ群)。
そしてすべてのサンプルを再灌流開始から6時間後に採取し、腎機能と酸化ストレス値を生化学検査と病理検査で測定しました。そしてオートファゴソームの形成は透過型電子顕微鏡で観察しました。また、アポトーシスの比率はTUNEL染色で調べました。
さらにカスパーゼ-3、チトクロームC、p53、DRAM、Becline-1、LC3、p62、LAMP2、リン酸化p53をウエスタンブロット法で調べました。
結果
OLT群と比較して、HRSの投与により劇的に病理ダメージが抑えられ、腎機能も維持されているとともに、酸化ストレス値も減少していました。そしてOLT負荷ラットのアポトーシス比率を抑えるとともに、カスパーゼ-3とチトクロームCの発現を抑えることで、HRSは有意にアポトーシスを抑制することが分かりました。
さらにHRS によりBecline-1とLC3の発現が増加し、p62とLAMP2の発現が減少していました。なお、クロロキノンによるオートファジーの阻害はHRSの腎保護作用を打ち消しました。
結論
HRSはアポトーシスを減らすことによって、肝移植によるAKIに対して多少の保護効果を発揮すると考えられます。そしておそらくはp53により阻害を受けたオートファジーの制御を介してだと思われます。
<一言>
オートファジーというのは、細胞内のおそうじ兼リサイクルシステムと申しますか、それが正常に行われないと汚部屋(おへや)ならぬ汚細胞となり、細胞機能に支障を引き起こしてしまいます。
肝移植を受けた側に急性の腎障害が起こることがあり、その発症メカニズムにオートファジー不全がからんでいるのではないかということらしいんですよね。よく動物モデルで水素が移植後の障害を軽減したみたいな研究がありますが、その水素の作用がオートファジー不全を軽減するためではないかということを、この実験では検証しているんですね。
題名にあるp53というのは遺伝子の一種です。p53が活性化すると細胞が老化することが分かっていますが、その一方で活性化が十分じゃないとがん増殖を引き起こしてしまうというやっかいな(?)遺伝子。水素がこのp53の活性化に影響を与える可能性があるようです。今後の研究成果で詳細がもっと明らかになることを望みます。