Three hydrogen-rich solutions protect against intestinal injury in uncontrolled hemorrhagic shock. | 致死的な出血性ショックによる消化管障害に対する 3種の高濃度水素溶液の保護効果
Int J Clin Exp Med. 2015 May 15;8(5):7620-6. eCollection 2015.
Three hydrogen-rich solutions protect against intestinal injury in uncontrolled hemorrhagic shock.
Department of Hematology, 88 Hospital of PLA
Abstract
Intestinal tissue got largely decreased blood supply in uncontrolled hemorrhagic shock, because of limited blood mainly supporting brain, heart, kidney etc. This makes intestine as the primary injury target after uncontrolled hemorrhagic shock. However, limited studies focus on how to protect intestine against hemorrhagic shock. Ringer’s solution, pentoxifylline and hypertonic saline are widely used to resuscitate in haemorrhagic shock and sepsis tissue injury. Evidence showed that hydrogen inhibited inflammation and reduced oxidative damage. Here we tested the hypothesis whether hydrogen rich Ringer’s, pentoxifyline and hypertonic saline solutions increase the benefit in protecting small intestine from injury in uncontrolled hemorrhagic shock rat model. We tested the anti-inflammation effect of H-Ringer’s, HHES and HHSH administration. We found hydrogen-rich solutions treatment groups showed the decreased MDA, MPO, IL-6 and TNF-α levels, and increased SOD, IL-10 comparing with those of non-hydrogen solutions administration groups. Our histological results showed that these three solutions with saturation hydrogen alleviatived the intestinal injury including the intact intestinal villi and less neutrephil infiltration. Our results indicate that these three hydrogen-rich solutions can protect intestinal injure after uncontrolled hemorrhagic shock. The protective effect might be through inhibiting proinflammatory factors, promoting anti-inflammatory cytokines and reducing inflammatory cells infiltration. Our study has potential clinical importance of uncontrolled hemorrhagic shock patient’s resuscitation.
Int J Clin Exp Med. 2015 May 15;8(5):7620-6. eCollection 2015.
致死的な出血性ショックによる消化管障害に対する
3種の高濃度水素溶液の保護効果
PLA第八十八病院 血液学
<要旨>
致死的な出血性ショックが起こると、消化管組織への血液の供給が大幅に減少します。というのも、限られた量の血液は大切な脳や心臓、腎臓へと回るからです。このことから致死的な出血性ショックを引き起こすと、消化管が真っ先に障害を受けることになります。しかしながら、出血性ショック時の消化管保護に焦点を当てた研究は非常に少ないのが現状です。
なお、現状ではリンゲル液やペントキシフィリン、高張生理食塩水が出血性ショックや敗血症による組織障害からの蘇生時に広く使用されています。また水素は炎症を抑え、酸化ダメージを減少させることが知られていることから、高濃度に水素を含んだリンゲル液やペントキシフィリン、高張生理食塩水が、致死的な出血性ショックを起こしたラットの小腸障害に保護的に働くのではないかと考えました。
そこで私たちは、水素添加リンゲル液(H-リンゲル)、水素添加ペントキシフィリン(H-HES)、水素添加高張生理食塩水(H-HSH)投与による抗炎症効果を調べました。
その結果、高濃度水素溶液を投与すると、水素を含まない溶液を投与した場合よりもMDA、MPO、IL-6、TNF-α値が減少し、SODとIL-10が増加することがわかりました。
さらに組織学的見地からみても、3種の水素飽和溶液を投与した群では、腸絨毛が損傷を受けていなかったり、好中球浸潤が見られなかったりと、消化管障害が抑えられていることが分かりました。
以上の結果から、3種の高濃度水素溶液は、致死的な出血性ショック後に起こる消化管障害対して、保護効果を発揮するといえます。そしてその保護効果は、炎症性サイトカインを抑えるとともに、抗炎症性サイトカインを増加させ、炎症性細胞の浸潤を減らすことによって発揮されると考えらえます。
今回報告した研究内容は、致死的な出血性ショックからの蘇生を行う上で、臨床的意義があると考えます。
<一言>
何度か出てきている出血性ショックを起こした動物に水素を与える研究です。出血性ショックを起こした時に、残り少ない血液を大事な臓器に分配するため、どうでもいいと言ってはなんですが、命の優先順位の低い消化管に血液が回らなくなるので、消化管に障害が起きてしまうということらしいです。そんなことが起きているとは知りませんでした。
それに対して水素を溶け込ませた溶液3種類を使ってみたらどうなるかを調べたところ、消化管障害が抑えられた…とのことです。すでに脳梗塞や心筋梗塞の救急治療に水素ガスの吸入が使われているとのことですが、さらに出血性ショックにも使えるとなると、救急医療でさらに応用の幅が広がりますね。
本当に、救急車に水素ガスが載せられている…そんな時代がくるかもしれません。